投壺(とうこ)のルールと遊び方|壺までの距離・点数の数え方を図解
- 地域:
- 中国・韓国
- タグ:
- 少人数, 中規模, 投擲, アジア, 伝統, 家族向け
この記事の要点
- 人数
- 2–8 人
- 試合の長さ
- 1人4本ずつ交互に投げて1回。古典は3回勝負
- 道具
- 壺1つ・矢(1人4本)・得点を数える棒や小石
- 広さ
- 壺から矢2本半(60cmの矢なら150cm)。屋内でも屋外でも
このゲームはどんなもの?
投壺(とうこ、中国語: tóu hú)は、矢のような細い棒を離れた場所から壺に投げ入れて、入った本数を競う 中国の伝統的な投擲遊戯 です。
いちばん古い記録は歴史書『春秋左氏伝』の昭公12年(紀元前530年)の条で、晋の君主が斉の君主をもてなす宴で投壺をしたと書かれています。2500年以上前の春秋時代には、すでに宴の遊びとして行われていたことになります。
儒教経典『礼記』には「投壺」という篇があり、壺と矢の寸法、投げる距離、得点の数え方、主人と客のあいさつまでが記されています。 弓を射る儀礼(射礼)を簡略にしたものとも説明される、宴席の礼儀作法をともなう遊び です。
朝鮮半島では三国時代の記録があり、高麗・朝鮮の王室や貴族の遊びとして受け継がれて、韓国では「투호(トゥホ)」と呼ばれています。 日本には奈良時代に伝わり、正倉院には耳のついた金銅製の投壺の壺が残っています。
図:投げる位置から壺までの橙の矢印の長さが、濃い灰色の矢を2本半並べた長さと同じです。『礼記』の「矢2本半」を目で見られるようにしました。縮尺は正確ではありません。
必要な道具と準備
投壺は道具が少なく、準備もほとんど要りません。壺と数本の矢、そして数メートルの平らな空間さえあれば始められます。
- 壺 — 細長い首と、ふくらんだ胴をもつ壺。後の時代には首の両側に小さな筒形の 耳 がつくようになりました。現代の遊びなら、陶器・木・金属など材質は問いません
- 矢(投じる棒) — 鏃(やじり)のない細い棒。竹や細い丸棒でも代用できます。先が丸く軽いものが安全です
- 投げる位置の目印 — 壺から「矢2本半」の距離に、線や敷物で目印をつけます
- 得点を数えるもの — 入った矢の本数を記録する小石・カード・紙とペン。古典では「算(さん)」という細い棒を置いて数えました
- 会場 — 屋内・屋外どちらでもOK。平らな面と、投げる方向に人がいない空間を選びます
家族で遊ぶだけなら、口の細い花瓶やペットボトルに割り箸を投げ入れるだけでも十分に楽しめます。背の高い壺は倒れやすいので、足元を安定させましょう。
コートと道具の寸法
投壺には、近代スポーツのような 公式の規格はありません。よりどころになるのは『礼記』投壺篇の記述で、下の表はその本文にもとづく値です(1回に投げる本数だけは、平凡社『世界大百科事典』の解説によります)。尺・寸の長さは時代によって違うため、センチメートルへの換算はしていません。
| 項目 | 『礼記』の記述 | 備考 |
|---|---|---|
| 壺の首の長さ | 7寸 | 原文「頸修七寸」 |
| 壺の胴の長さ | 5寸 | 原文「腹脩五寸」 |
| 壺の口の直径 | 2寸半 | 原文「口徑二寸半」 |
| 壺の容量 | 1斗5升 | 原文「容斗五升」 |
| 壺の中身 | 小豆 | 入った矢が跳ね出ないように詰める |
| 壺までの距離 | 矢2本半 | 原文「壺去席二矢半」。座る席から測る |
| 矢の長さ | 室内 5扶・堂上 7扶・庭 9扶 | 1扶は指4本を並べた幅。広い場所ほど長い矢を使う |
| 矢の材料 | 柘か棘の木 | 皮をはがずに使う |
| 算(得点棒)の長さ | 1尺2寸 | 入った矢1本ごとに1本置く |
| 1回に投げる本数 | 1人4本 | 交互に投げ、これを3回くり返す |
距離は「矢の長さの2.5倍」なので、矢が長いほど遠くから投げます。計算例として、60cm の矢なら 150cm です。
図:『礼記』の壺の寸法です。緑が首の長さ(7寸)、濃い灰色が胴の長さ(5寸)、橙が口の直径(2寸半)。破線の耳は後の時代の壺の特徴で、『礼記』には書かれていません。胴の幅は目安です。
推奨人数・年齢層
| 形式 | 人数 | 備考 |
|---|---|---|
| 1対1 | 2人 | 『礼記』の主人と客の形 |
| 2チーム | 4〜8人ほど | 『礼記』では客の側が右、主人の側が左に並ぶ |
| 順番に全員で | 何人でも | 家族や行事向き。1人ずつ得点を記録する |
力をほとんど使わないので、子どもから年配の人まで一緒に楽しめます。座ったままでも投げられます。
ルール
投壺は「離れた場所から、細い矢を壺に投げ入れる」ことを競うシンプルなゲームです。まずは下の最小ルールだけ覚えれば、その日のうちに遊べます。
あそびかたの流れ(最小ルール)
- 壺を平らな場所に置き、そこから矢2本半の距離に投げる位置の目印をつけます
- 順番を決め、各プレイヤーは同じ本数(4本など)の矢を持ちます
- 目印の位置から、1本ずつ順番に矢を壺へ投げ入れます
- 壺に入った矢1本につき1点。まずは入った矢の本数だけを数えれば十分です
- 全員が持ち矢を投げ終えたら得点計算。合計点の多い人(またはチーム)の勝ちです
- これを1回として3回くり返し、勝った回数が多いほうを勝者とします
最初は「壺の口に入れる」ことだけを意識すればOK。慣れてきたら、次の標準ルールを足していきましょう。
標準ルール(技を加える)
- 順番を守る — 『礼記』では、順番どおりに投げた矢だけが「入った」と数えられ、相手の番を待たずに続けて投げた矢は数えません
- 耳を狙う — 後の時代の壺には首の両側に耳がつき、耳に入った矢も得点になりました(正倉院の壺の解説より)。口より狭く難しいので、配点を高くする取り決めにすると戦略性が増します
- 投げ方 — 力任せに投げると軌道がブレます。手首を柔らかく使い、矢が弧を描いて口にすっと落ちる山なりの軌道を狙うと安定します
- 作法を楽しむ — 『礼記』では、主人が「曲がった矢と口のゆがんだ壺ですが、これでお客さまを楽しませたい」と誘い、客は2度辞退してから3度目に受けます。投げる前に一礼するなど、所作を楽しむのも投壺らしさです
公式競技ルール
投壺には、国際連盟や全国的な協会が定めた統一ルールはありません。基準になるのは『礼記』投壺篇の古典の作法で、その流れは次のとおりです。
- 進行役の「司射(ししゃ)」が壺の位置を測り、席から矢2本半のところに置きます
- 客の側と主人の側が交互に投げ、矢が入るたびに司射が「算」を1本ずつ置きます
- 投げ終わったら算を数え、2本で1純(じゅん)、余った1本を 奇(き) として、「どちらが何純勝ったか」を告げます
- 勝った側が負けた側に酒を注ぎ、負けた側が飲みます
- 勝つたびに「馬(ば)」という勝ち札を立て、3回の勝負で馬の多い側を祝います
- 投げるあいだ、琴などの弦楽器で「狸首(りしゅ)」という曲を一定の間隔で演奏します
時代が下ると、耳のついた壺や、入り方に名前と点数をつけた遊び方が広まりました。宋代には司馬光が、古い礼の精神に立ち返った投壺の手引き『投壺新格』をまとめています。いまも中国・台湾・韓国の文化行事で投壺が紹介されますが、距離や本数は主催者ごとの決まりです。
得点計算の例
『礼記』の数え方(2本で1純)で計算してみます。
- 例1:7本と5本 — 客の側が7本、主人の側が5本入れました。客の側は3純1奇、主人の側は2純1奇です。差は2本なので「客の側が1純勝つ」と告げ、主人の側が酒を飲みます
- 例2:6本と5本 — 差が1本だけのときは「奇」と告げ、1本差の勝ちです
- 例3:同じ本数 — 6本と6本のように同じなら「左右鈞(ひとし)」と告げ、引き分けです
- 例4:順番を飛ばした矢 — 自分の番でないのに続けて投げた矢は、壺に入っても算を置きません
図:例1の数え方です。緑(客の側)は7本=3純1奇、濃い灰色(主人の側)は5本=2純1奇。緑の輪で囲んだ1組が、客の側の「1純の勝ち」にあたります。
よくある反則・判定の迷いどころ
以下は『礼記』投壺篇に書かれている扱いと、現代の遊びでの一般的な決め方です。
- 続けて投げる — 『礼記』では、順番を待たずに続けて投げた矢は入っても数えません
- 礼を欠く — 『礼記』は、おごった態度をとる、背を向けて立つ、順番でないのにしゃべる、を戒め、破った人は罰として酒を飲むとしています
- 跳ね出た矢 — 『礼記』は壺に小豆を詰めて跳ね出ないようにしていました。小豆なしで遊ぶなら、「最後に壺に残っていれば1点」と先に決めておきましょう
- 口に引っかかった矢 — 口の縁に寄りかかって中に入りきらない矢をどう扱うかは、古典の本文には書かれていません。遊ぶ前に決めておくともめません
- 位置の踏み越し — 距離は「席から矢2本半」なので、投げる位置の目印より前に出て投げた矢は数えない、とするのが自然です
楽しむコツ
初心者がつまずきやすい点
- 力で投げない — 軌道がブレます。手首を使った優雅な投げが基本
- 真上から落とそうとしない — 山なりに、壺の口にすっと入る軌道を狙います
- 耳狙いは後回し — まずは中央の口を狙って慣れましょう
盛り上げる工夫
- 古典にならい、勝った側が負けた側にジュースやお茶を注ぐ「罰ゲーム」にすると、礼の雰囲気が出ます
- 着物や民族衣装を着て遊ぶと、写真映えします
- 算の代わりに割り箸を置いていき、最後に2本ずつ組にして「何純勝ち」と数えると、古典の気分を味わえます
年齢別のアレンジ
- 子供: 距離を短く、口の広い容器から始める
- シニア: 椅子に座ったまま、ゆったりと
- イベント: 正月遊びや、中国・韓国の文化を紹介する催しに
日本で遊ぶときの工夫
- 身近な道具で — ペットボトル+割り箸でも遊べます。中に小豆や米を少し入れると、倒れにくく矢も跳ね出にくくなります
- 投扇興と比べる — 江戸時代の安永2年(1773年)に、投壺をまねて考え出されたと伝わる「投扇興(とうせんきょう)」は、扇を投げて的を落とす日本の遊びです。両方を並べて遊ぶのも楽しいでしょう
- 正倉院の壺を知る — 奈良国立博物館の正倉院展用語解説で、正倉院の投壺の壺の形を知ることができます
よくある質問
Q. 何本入れたら勝ち?
決まった点数先取ではなく、同じ本数を投げて入った本数の多いほうが勝ちです。『礼記』では2本で1純と数え、「何純勝ったか」で勝負を告げました。遊びでは3回投げて合計を比べる、などの決め方で十分です。
Q. 壺からどれくらい離れて投げる?
『礼記』では「矢2本半」、つまり使う矢の長さの2.5倍の距離です。60cm の矢なら 150cm になります。子どもや初心者なら、もっと近くから始めてかまいません。
Q. 芝生でもできる?
できます。ただし芝生は凸凹があるので、壺の下に板やトレーを敷いて水平にすると、倒れにくくなります。軽い容器なら、中に砂や小豆を入れて重しにしましょう。
Q. 子どもは何歳から遊べる?
年齢の決まりはありません。棒を投げられれば遊べます。矢は先の丸い軽いものにし、口の広い容器を近くに置けば、小さな子でも入る楽しさを味わえます。
Q. 壺や矢の代わりになるものは?
口の細い花瓶、背の高いペットボトル、茶筒などが壺の代わりになります。矢は割り箸、菜箸、細い丸棒が手軽です。本数と長さをそろえておくと、公平に勝負できます。
もっと知りたい人へ
- 『礼記』投壺篇(維基文庫・原文) — 原典
- 奈良国立博物館 正倉院展用語解説「投壺」 — 正倉院の投壺の壺
- 韓国民族文化大百科事典「투호」(韓国学中央研究院) — 韓国での歴史
- 韓国国立民俗博物館ウェブマガジン「투호」特集 — 高麗・朝鮮の王室での投壺
- 関連: 輪投げ、ラダーゴルフ、ペタンク — 同じく目標を狙う投擲系
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